ハダリ（タイプ2052）が戦闘モードで起動した理由

ハダリ起動場面のあらすじ

ロクス・ソルス社のシステムに侵入するトグサ

ロクス・ソルス社のガイノイド製造プラント船に忍び込んだ、バトーをバックアップするトグサ。

確保したキムの脳殻を経由して、警備主任の電脳をハックしている。

侵入に気づかれてしまう
		交代要員が来て、警備主任および他の要員の異変に気づき、緊急警報を発令。「遅効性ウイルス」を疑い、抗体をロードする。ハックされた主任には論理接続できないため、あっさりと物理フォーマットをしてしまう。

システムが起動して、ウイルススキャンをかけている。

電脳戦の開始。

患部の隔離。防壁の再構築。
敵（トグサ）攻性防壁の変動パターンが判明し、攻撃に転じる。

逆撃を受けるトグサ
		必死に撤退戦を演じるトグサだったが、多勢に無勢で最後の防壁も突破され、身代わり防壁装置を破壊されてしまう。

キムの死と、ダイイングメッセージ
	ケーブルを引き抜いたため、トグサは無事だった。		しかし、キムは脳を焼かれて死亡する。

そのとたん、「生死去来　棚頭傀儡　一線断時　落々磊々」という、キムのダイイングメッセージがホログラフに表示される。

ハダリの起動と、戦闘用プログラムのロード
ガイノイド製造ラインでは、ハダリ最終工程で非正規入力が確認された。未確認の潜伏型ウイルスと推定し、全種類の抗体で阻止しようとする。

ハダリのコンテナが浮上してくる	パニクる、エンジニア	ハダリのコンテナは、「エイリアン」の繭の設定

しかし間に合わず、ハダリの全機体が起動してしまう。そして、戦闘用義体制御プログラムもロードされてしまう。

戦闘用義体制御プログラムをロードされたハダリが姿を現します。

設定では、最終工程を中断したので皮膚はなく、球体関節もむき出しの状態です。

ハダリ起動の真相

イノセンスの設定としてハダリが起動したのは、バトーが侵入したためにその排除が目的ではなかったわけです。

なぜならば、ハダリが起動するにあたり
　１．エンジニアがあわてていた。
　２．警備担当者が抗体を展開して、感染を防ごうとした。
　３．武装警備員があわてて防戦体制を敷した。そして、ハダリと抗戦した。
　４．ハダリがバトーも襲った。
というように、「不正侵入者排除」が目的であれば、矛盾した場面（「４．」は別）が多数見られます。

その真相解明は、絵コンテ（ロマンアルバム 2501～イノセンス絵コンテ集 P205）の欄外注記に書いてありました。
それは、「キムが死ぬと、ウイルスが発動」するという設定になっていたからです。

台詞に無ければ分からないことを、なぜ押井監督はしたのでしょうか。
それは「分かる人が分かればいい」と、考えているからですが、他にもあります。それは
　１．関連性を説明する気がなかった。
　２．説明という台詞自体が、だんだん嫌いになってきた。
　３．これから戦闘シーンに入るのに、そのテンポを落としたくなかった。
ということだそうです。

これで映画の場面進行における全ての矛盾が解決できますね。

戦闘用プログラムをロードしたハダリが起動したのは、不正侵入者の撃退のためではなく、キムが死に「生死去来　棚頭傀儡　一線断時　落々磊々」というダイイングメッセージが表示されたのをきっかけに、遅効性ウイルスが発動するように、キムが事前にプログラムをしていたからです。

ハッカーであるキムがハッキングがばれて攻性防壁に攻撃され、脳を焼かれ死亡した場合に、その復讐のためにウイルスを仕込んでおいた、というのが真相でしょうか？。

それにしても押井監督の作品は、奥が深いですね。