GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 設定用静止画

 

 

前書き

 これらの画像はLDの特典映像として収録されていたものです。

 実は「精霊の守り人」のページ内にある「「精霊の守り人」制作秘話」においても、設定画像をたくさん載せています。それというのも、その作品に興味がわくと、完成までの間の制作期間内での事も知りたくなるからです。セルビデオに収録されている「特典映像」は、そう言う気持ちを捉えるために収録してあると思います。そしてこれら映像は、作品を作るにおいて制作者の苦労や考えを観客が知ることにより、作者の意図が分かり、その作品への理解が深まったり、また共感することにより、更にその作品が好きになるのではないでしょうか。
 そして、映像の世界を志す者にとっては、作品を創造する段階で創られるこれら「設定画像」や「絵コンテ」を見たり、監督の記入する「場面設定」の指示を見ることは、制作手法や考えを知る重要な参考になると思います。

 ま、難しいことは考えず、これらの「絵」を見ているだけでも楽しいので、皆さんどうぞご鑑賞ください。

 

 それにしても、映像では殆ど確認できないような「細かい小道具」や「映像にはない「角度での描写」」までしっかり設定されていますね。それだけこの「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は、「丁寧に創られた作品」であるということが言えると思います。

 余談ですが、ジブリ作品のDVDには「本編」の他に、この「設定画」に本編で使用している音声をかぶせ、本編と同じ長さの映像を修めています。言うなれば、「設定画」「絵コンテ画像」を使用した「本編」と言えましょう。

 


 

目次

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

資料映像3 美術設定(抜粋/26点)
資料映像4 レイアウト(1)
(抜粋/全カット中113カット)

資料映像4 レイアウト(2)

資料映像4 レイアウト(3)
資料映像4 レイアウト(4)

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参考資料

 このホームページの各解説やセリフ部分をこの2冊から借用しました。
The Analysis of 「攻殻機動隊(Ghost in the Shell)」
設定映像の「解説」部分に利用

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攻殻機動隊絵コンテ集
「資料映像4」の「絵コンテ内容」である設定の説明文と、セリフに利用

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実はこの本を、あまり読んでいませんでした。アニメを書くことがない自分としては「アニメを作るのにはこういう事をするのか」、という程度でしか内容を見ていませんでした。
しかしこの本は、「完全データブック」とあるように、アニメ創作段階での重要なことがぎっしり詰め込まれ、このホームページを作るに当たり、欠かすことが出来ない資料となりました。

(この本の各カット画像が、今回このページに利用した設定画像とほぼ一致しているのは、何か理由があるのでしょうか)

「資料映像」に比べ、絵コンテはより単純な描き方でした。
また両者でアングルが違うものがあり、創作段階で色々修正があったことを知ることが出来ました。

 


 

 

設定用静止画集

*

 各設定画像の下の文章は、上に紹介した「The Analysis of 「攻殻機動隊(Ghost in the Shell)」」の解説文を、基本的には「原文のまま」載せています。
 ただし一部、画像の配置等との関係で、多少変更を加えてあるものもあります。

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

車両/9

バトーの車両

・外観(1) ・外観(2) ・内部  
後部座席にタワー型コンピューターを搭載。走行装置は4WD、4WSで、機動性は思いのほか高く、映画の中でも、見事なスピン・ターンを見せていた。
 

トグサの車両

・外観 ・内部  
トグサの愛車。今で言えば '60s とでもなるのだろうか。リボルバーを愛用し続けるトグサの性格がどことなく車のセンスにも表れているようなデザインだ。
 

偽装バン

・外観(1) ・内部(1) ・外観(2) ・内部(2) ・内部(3)
・車内収納庫
(車内後方の側壁に据えつけのSMGラック)
・裏側  
ハッカーを追跡するときに用いる偽装バン。車体に防弾処理が施されているが、ハッカーのSMGから発射されたHV撤甲弾までは防ぐことが出来なかった。
 

車両/その他

・構内車 ・清掃車 ・逃走車 ・逃走車・内部  
 

 

ヘリコプター・戦車

狙撃ヘリ

・スタビライザー ・射撃モード(1) ・射撃モード(2) ・巡航モード  
 
 

狙撃管制ヘリ

・外観(1) ・外観(2) ・内部    
   
 

戦車

6課の逃亡車を守るために投入された戦車。走行装置は多足型。いわゆるキャタピラを履いた従来の戦車と異なり、野戦を想定したものではなく、市街戦用に開発されたものなのだろう。そういった意味では、厳密には戦車というよりも装甲車に分類されるべきなのかもしれない。とにかくこの形態では接地圧(単位面積にかかる重量)が異常に高くなるので、軟弱地での行動はまず無理である。そのかわり、瓦礫やバリケードなど、都市型の障害物には高度な機動性を発揮するに違いない。
・外観(1) ・外観(2) ・外観(3) ・外観(4) ・外観(5)
多足型の走行装置を持つ戦車の形態を様々な角度から見る。こういった特殊な足回りは、当然、MBT/主戦闘戦車と呼ばれるタイプを想定したものではなく、あくまで緊急派遣部隊などの特殊部隊での使用を考えてのものだろう。戦闘兵器としてこういった多足歩行型の車両を開発する際、最大のネックとなるのは、走行装置(本には「装甲装置」と誤植されている)の制御技術である。特に戦闘時の損傷を想定して、少なくとも3足、限定的には2足での歩行も保証しなければならない。そういったソフトウェアーの開発があって初めて可能となる技術なのである。
・アーム ・ガトリング砲 ・コクピット ・配置参考 ・対人機関銃

マニピュレーター

前脚の第二関節部に収納されているマニピュレーター。元々の用途が何なのか不明。かなり高い自由度を持つようだ。

7.62mmバルカン

この戦車の主武装。いわゆるガトリング銃で、おそらく現在でも米軍で使われているミニ・ガンの発展型だろう。

コマンダーズ・ハッチ

カプセル・タイプのコクピットおよびコマンダーズ・ハッチ。ハッチはいわゆるキューポラではなく、外部視界は車体前部の視察装置を通して得ることになっているようだ。

戦車上面の人物配置

素子が人形使いにダイブするシーンの人物配置。戦車の上面はコマンダーズ・ハッチがあるだけのいたって簡単なもの。これも武装が機関銃のみで、ローダー(装填手)もガナー(砲手)も必要としないワンマン・コントロール戦車だからこそなのだろう。

対人機関銃

前脚の肩の部分に装備されている対人機関銃。最近の戦車は同様の装備をコマンダーズ・ハッチに取り付けている例が多い。

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

資料映像3 美術設定(抜粋/26点)
資料映像4 レイアウト(1)
(抜粋/全カット中113カット)

資料映像4 レイアウト(2)

資料映像4 レイアウト(3)
資料映像4 レイアウト(4)

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資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

銃器/公安9

ナインウェポン(CZN-M23M/素子使用):LDより

(「The Analysis of 「攻殻機動隊(Ghost in the Shell)」」には)クルスベ・ツァスタバ・ノスレ CZN-M22となっている。
正式名称:CZN-M22(クルスベ・ツァスタバ・ノスレ・モデル22 セルビア製)
種別:サブ・マシンガン(ただし拳銃弾ではなく新開発のカートリッジを使用。アサルト・ライフルとの中間的な性格を持つ)
・外観(1) ・外観(2) ・カートリッジ ・照準器 ・セレクター

5.7mmP90

ツァスタバ・ノスレM22の標準カートリッジ。5.56mmNATO弾と9mmパラベラムの中間的な性格の銃弾。現在は発禁になっており、9課のような特殊部隊でしか使われていない。


ナインウェポンの目視照準装置。後方サイトはネジで微調整が出来るようになっている。

グリップ前方にガードと一体式で取り付けられたセレクター。トリガーに指を掛けたままで操作できる。選択はセイフティー、セミオート(単発)、フルオート(連射)の3モード。サイボーグが使うことを前提にしているので、バーストは省かれている。
・マズルフラッシュ ・銃口 ・携帯時対比 ・内部(1) ・内部(2)

       
      右側のマズル・フラッ
     シュの方が大きい。

ナインウェポンの銃口に取り付けられたコンペンセイター。コンペンセイターは上面に開けられた孔からマズル・ブラストを逃がし、その反動で銃口の跳ね上がりを抑える装置。この銃では右側の孔の方を大きくして反動が左下に向くように工夫されている。
・ユニットケース        
トランクの中身の設定

バイヨネットとは銃剣のこと。時代が時代だけにおそらくセラミック製だろう。銃剣はドライバー代わりに使ったり、穴を掘ったり(?)といろいろな用途に使えるので現代でも意外と重宝されているということだ。次にグレネード・ランチャーだが、これは手榴弾程度の破壊力を持つグレネードを発射する装置で、銃の上側面のへこみの部分に装着される。弾種には発煙弾と炸薬弾、それにマーカー弾がある。その他マニュアルやストラップ、マガジン、交換用の銃身など各種の戦闘に必要な一通りの装備が納められている。

 
 

ジェリコ942FS(バトー携帯)

正式名称:.50口径オートマチック・ハンドガン ジェリコ942FS
概要:.50口径(12.7mm)弾を用いる大型オートマチック・ハンドガン。9課ではバトーが使用。コンバージョンキットを用いることで、さまざまな口径の銃弾を用いることが出来るデザート・イーグル50AE、通称ベビー・イーグルの発展型。反動は、マグナムほど強くないにしても、かなり大きいことには変わりはなく、バトーのように体の大きな人間でないと、使いこなすのはまず難しいであろう。
       
 

マテバM207(トグサ携帯)

・外観 ・ホルスター      
 
 

ペネトレイターSPIW2020 MlNI14/バトー使用)

・外観(1) ・外観(2) ・トグルアクション ・マズルフラッシュ ・対比図


通常状態


排出時

ペネトレーター上部の白い部分が、「通常状態」では平べったく収まっていますが、「排出時」には折れ曲がって三角形の形で出っ張っています


対戦車銃は極端に反動が大きいので、銃口のスタビライザーもコンペンセイターというよりはマズルブレーキ的な働きが大きくなっている。

マズルフラッシュ画像は
こちら」です

 

ツァスタバCZ-MlOO(素子携帯)

・外観(1) ・外観(2) ・銃口    
   
 

KOMPROMISSLOS9課狙撃銃)

正式名称:7.62mm狙撃銃“KOMPROMISSLOS”(開発・製作/モーゼルタキシード)
概要:各種センサーを統合した義体用の狙撃銃。赤外立体視CCDを備え、夜間でも高い命中率を誇る
・外観(1) ・外観(2) ・赤外線立体視CCD    
   
 

銃器/その他

中国製UZI-SMG(ハッカー使用)

・外観(1) ・外観(2) ・マガジン ・マズルフラッシュ  
 
 

外交官ボディーガード使用

SIG-TYPE HANDGUN ・偽装SMG(ステアーTMP    
   
 

公安6課使用

・ステアーTMP SIG541カービン ・ベレッタ・クーガー  
 
 

ULTIMA RATIO FULL-SENSING(狙撃ヘリ搭載)

・外観(1) ・外観(2) ・照準器(1) ・照準器(2) ・銃弾(フレシット弾)

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

資料映像3 美術設定(抜粋/26点)
資料映像4 レイアウト(1)
(抜粋/全カット中113カット)

資料映像4 レイアウト(2)

資料映像4 レイアウト(3)
資料映像4 レイアウト(4)

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資料映像3 美術設定(抜粋/26点)

義体

・製造過程(1) ・製造過程(2)      
義体製造過程の設定。左(1)はまだ皮膚が形成されてなく人工筋肉が剥き出しの状態。右(2)は最終工程に入った段階で、人工筋肉の上に基礎的な皮膚組織が施され、さらにその上に人工皮膚が形成されて義体が完成する様子が示されている。これら全ての過程が液層内で行われるというのは、羊水の中で人間が形作られていくのを暗示しているのだろうか。いわば、この電脳ラボの液層全体を人造の子宮として捉えているのかもしれない。  
 

公安9課電脳ラボ

・全景 ・平面図 ・メンテナンスルーム ・メンテ用べッド(1) ・メンテ用べッド(2)
・参考用CGワーク(1) ・参考用CGワーク(2) ・参考用CGワーク(3) ・参考用CGワーク(4) ・参考用CGワーク(5)
CG合成の参考用に描かれた9課ラボラトリー/メインテナンス・ルームの設定。これらを見ると、実に綿密な空間設計がなされていることが分かる。美術設定を担当した渡部氏はこれらを設定するに当たり、コンピューターで3次元のモデリングを行い、まず空間設計をきちんと行ってから作業に入ったという。たからこそ、物の配置も含めて、一切破綻のない画面構成を行うことが出来たのだろう。設定が複雑になればなるほどこうした作業が重要になってくるのは言うまでもない。さもないと、本来画面の中に入ってくるはずの対象物が勝手に省略されたり、個々の相対的位置関係が曖昧になって、人物の空間的演技が出来なくなり、動きが2次元の枠の中に制限されてしまうなどといった現象が出てきてしまうのである。
 

公安9課ダイブルーム

・全景 ・ダイブギア      
イシカワが外務省のネットにダイブする時に使ったダイブ・ルーム。    
 

旧貯水池

(1) (2)      
     
 

新市街

・ビル ・概観      
     

博物館 

・外観(1) ・参考用CGワーク(1) ・外観(2) ・参考用CGワーク(2)  
「・外観(2)、CGワーク(2)」と「・外観(3)、CGワーク(3)」は、水没博物館の外観。両者はちょうど逆の方向から見た図になっている。「CGワーク(2)(3)」は3次元でモデリングした博物館のモデリング画像。
  ・外観(3) ・参考用CGワーク(3) ・内部 ・参考用CGワーク
 
  素子が降り立つテラスから見た博物館。「CGワーク(3)」は上と同じく、3次元でモデリングされたワイヤーフレーム。    

 

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

資料映像3 美術設定(抜粋/26点)
資料映像4 レイアウト(1)
(抜粋/全カット中113カット)

資料映像4 レイアウト(2)

資料映像4 レイアウト(3)
資料映像4 レイアウト(4)

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「絵コンテ」をより、映像に近い形に描いたのが、以下にある「設定画像」です。

絵コンテに比べて、掲載した「設定画像」は間引かれているので、「台詞」を読んでも飛び飛びになっています。その点はご了承ください

資料映像4 レイアウト(抜粋/全カット中113カット)

カット 設定画

絵コンテ内容

完成映像

状況設定 台詞

C-14-1

下界を見下ろす草薙
(間)
 
C014のレイアウト。草薙素子をなめて街並みを鳥瞰する。画面の中に素子を置くことによって、観客はそこに展開されるのが彼女自身の主観であることを意識するようになる。この時、画面の消失点と素子の視点は当然のことながら一致していなければならない。望遠レンズ風の圧縮された遠近感が街並みを威圧するような感覚を与えるが、これは素子の心理を映しているのだろうか。

C-15

SLOW MOTION  
カメラが切り替わり、素子が飛び降りる瞬間を今度は下から捉える。実写ではこういう場合、カメラ位置の制約、空をバックにすると逆光で被写体がつぶれてしまう(特にこのシーンのように夜空を背景にするときは、物理的にライトが当てられないのでより一層撮影が難しくなる)などの問題があって、横方向から大望遠で捉えることが多いのだが(滝壺に飛び込むシーンなどでおなじみ)、アニメーションではこういったアングルをとる上でも比較的制約が少ない。もちろんそこには正確なレイアウトをとることが出来るという前提が必要になるのだが。

C-30-1

証明書を差し出しながら 外交官
外交官!免責特権だ!
責任者をここへ呼べ!

C-33

パパパ!と連射
炸裂する外交官の頭と上半身
一瞬で血と肉と機械部品になる

ワッとのけぞる周囲の男達

 

C-34

中村が叫び
突入隊員たちが
素早く構える
中村
窓の外だ!撃てっ!

C-42

ホログラム画面
[V処理−以下同]
脳殻スキャン
接続チェック
 

C-45

PANUP

人工筋肉剥き出しの義体
CIBORG IMAGE

 

 


接続チェックの
データホログラム次々あらわれる

 


液層内で操り人形のような姿をさらす義体。まだ人工皮膚の処理が施されていないので人工筋肉が剥き出しになっている。

C-47

電脳ラボ全景
   −設定合わせ
 
電脳ラボ全景。中央に見えるのが液層で、その中に荷電マイクロマシンが液に埋没するような形で設置されている。液層は複数のそれぞれ水路でつながったセクションに分かれており、素子はその中を移動しながら義体のメインテナンスを受ける。

オス/メス・マスクを使って、中央の部分にだけ波ガラスをかけている。

C-59-1

ホログラム
体表面の触素受容器の分布が
徐々に密度を増して人体が浮かび上がる
 
C059/C076(下)の解説
液層内で義体が作られていくシーンにおけるセル・アニメーション・パートのレイアウト。
このシーンでは、セル・アニメとフルCGの画像が連続したシチュエーションの中で並行して進行していく − こうした見せ方は「パトレイバー2」のシミュレーターのシーンでも見られたものであり、CG画面の異質さを逆手にとることによって、逆にそれが、あくまでその作品世界におけるCG画像であることを強調するものでもある。

C-76

吹き上がる風に髪が舞う
(乾燥中)




通信が入る
 

C-83

外務省ビル(新市街)
屋上へリポート

着陸して
旋回翼ゆっくりと逆回転
走り寄るSPたち

 

C-95

草薙の後ろからINしつつ

 


並んで見おろし
呟くように




荒巻
・・・外務大臣の通訳だ。

23分ほど前、電話回線を経由して電脳にハッキングされた。

C-96

草薙の見た目

身代わり防壁にケーブルで
接続された通訳
ねむっている

 

 

荒巻
某国の情報筋の警告通り、“人形使い”がネットの各端末に介入しはじめた。その傾向を分析した結果、ガベル共和国との秘密会談に対する妨害工作の可能性が濃厚だったので、会議出席者全員に網を張って待っていたんだ。

C-102107

C-102
コックピット
トグサ既に装備済み


C-107
不満そうに

 



トグサ
人形使いって・・・あの正体不明のハッカーが?



トグサ
前から聞いてみたかったんだけど、なんで俺みたいな男を本庁から引き抜いたんです?

草薙(OFF)
お前がそういう男だからさ。



C-104-1

運転するトグサと
装備をチェックする草薙
2人の会話

トグサ
そんな凄腕がなんで旧式のHA-3なんかで?

草薙
新しいタイプだと確かに発覚しにくいし、逆探も難しいわ。でもそれだと状況からして直ちに前軍事政権の指導者だったマレスに疑いがかかる。

C-112

PANDOWN
旧市街の裏通り
(早朝)

 


ゴミ収集中の回収車
清掃員A、B

 

 

C-113

ハフハフ言いながら
ゴミ袋を放り込むAと
ピポパと電話しているB
 

C-115

B、隠すようにモゾモゾと

 

バケットを閉じて
腕時計を見るA

 

C-116

ジ〜〜ッとスリットを
移動するカード
(Bの見た目)
 

C-119

バオオ・・・と出て行く回収車  

C-126背景


C-126背景
・セル


アイドリングのまま
二人とも車を降りて

バトー、ブツブツと

バトー
くそったれオヤジ、聞き込みでもやれってのかよ!

C-131

テンポよくセリフ


←シート変形
  (設定合わせ)

草薙
本部、その地区の清掃局から情報を取って!

C-169

弾倉を落とし
同時に左手で弾倉を探る男
(SLOW)
 

C-174

バアーッとブッ放す
(左手はフォアのストラップを握っています)
ドでかいマズルフラッシュ
吹き戻しのガス圧でコートが膨らみ
銃口の下の地面から
一斉に土埃が舞い上がる
 
C-169/C-174については、多少順不同になるが、ハッカーがマガジンを入れ換えるところをあおりのアングルで強調して見せているC-169と、発射の反動も凄まじいC-174。C-174は、マズル・フラッシュで舞い上がる土埃を盛大に描くことによって銃の凄まじい威力を画面を通して如実に伝えるカット。こうした破壊力を表現するようなシーンでは、その対象となるもの自体よりも、むしろ周囲にあるものの反応を描き込む方が効果がある。またこのカットの前に、足元をしっかり固めるシーンを挿入しているのも、もちろん銃の凄まじいまでのエネルギーを伝えるためである。それと、今回の映画化に当たって、銃の発砲の感覚をつかむためにメイン・スタッフでグァムまで実銃を撃ちに行った経験も生かされているのかもしれない。よく注意して見ると、C-174で背景が奥に向かって倒れ込んでいるが、これはあおり気味の広角レンズを想定してレイアウトを取っているため。このあたり、同じあおりでありながら、標準レンズを想定したCと思われるC-178(参考にした本には画像があるが、LDには収録されていません)と比べてもらいたい。

C-185

ルーフに腕を伸ばして
ものも言わずに
ドカドカ発砲するバトー
 
ジェリコを構えるバトー。アメリカの刑事ものなどでおなじみのショット。こうしたカットの場合、きちんと足元まで想定して描かないと、人物に対して車が不用意に小さくなりすぎたり、(画面には見えないが)足の位置が不自然になったりすることがある。もっともアメリカ映画などでもそのあたりは、人間を踏み台にのせるなどして、臨機応変に対応しているようなので、そんなに堅く考えなくてもいいのかもしれないが。あとやはりこういうカットを見ると、車は銃撃シーンに欠かせない小道具だな、とあらためて感じさせられてしまう。

C-186

低い位置に弾着
身を翻して路地に走り込む影
 

C-188背景・BOOK

通行人(買物客)を突き飛ばして
奥へ消える影
撃てない
 

C-195

密マルチPANUP

半露天式の市場
向こう側に運搬用の水路が見える

 

C-197

店内より  

 

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

資料映像3 美術設定(抜粋/26点)
資料映像4 レイアウト(1)
(抜粋/全カット中113カット)

資料映像4 レイアウト(2)

資料映像4 レイアウト(3)
資料映像4 レイアウト(4)

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カット 設定画

絵コンテ内容

完成映像

状況設定 台詞

C-204

バトー主観
押し寄せる群衆の顔
何割かはカメラ目線で−
(SLOW)
 

C-220

板堀を蹴り破って
躍り出るバトー
 

C-222

船伝いにトントンと
八艘跳びで逃げる影
 

C-224

発砲する
(肩づけして頬もつけます)
 
さりげなく後方に新市街が見えているのもポイントの一つだが、それよりもここでは素子の射撃姿勢に注目していただきたい。銃の大きさをごまかさずに描くことがどれほど大変か、このカットを見ていただけたら分かるだろう。ちなみに普通なら、勝手に銃を大きくしてもっと楽な姿勢で描くところである。

C-228

走る男の主観
両側に迫るビルの間から
僅かに望む空
 

C-231

台回し

廃墟のような静けさ
空がスーッと明るくなる

 

C-240

上がってくる男
背後に大看板の群れ

カメラ前で立ち止まり
ホッと一息入れる
薄く笑いが浮かぶ

 

C-248

ザ!と踏み込んで
ナイフ一閃
(空振り)
 


看板の海の前で一人で殺陣を演じるハッカー。おもいっきり引いてハッカーの状況を客観化しているが、これだけの情報を前に見えない敵と戦わねばならない皮肉も込められているのではないだろうか。

C-256/監督の演出

着地する
  ↓
その目の前に
ブン!と出現する草薙
  ↓
ワンツーでババ!と
目にも止まらぬジャブと
掌底を放ち
 
格闘シーンに対する監督からの注意書き。ゲーム・マニアの監督らしく、テクニカル・タームを駆使した表現になっている。
格闘シーンのレイアウト。全体に動きの少ないカットが多い中で、この一連のカットだけは激しくカメラを動かし、闘いの緊迫した感じを演出している。特にC259はダブルアクションの繰り返しで、おもいっきりてらいのある画面作りを意図しているようだ。動かさないことによって生まれる迫力と、動かすことによる迫力。どちらにしても、やるなら極端なぐらいに。中途半端は一番つまらない。

C-259

ダブルアクション

ムズかしくて描けない
バーチャル□ァイター見て研究してくれ・・・

 

C-272

早い▲F.I
暗い取調室
ゆっくりとT.U−

清掃局員B
疑似体験て、どういうことです?

トグサ
だから、奥さんも娘も離婚も浮気も、全部ニセモノの記憶で、夢のようなもんなんです。あなたは何者かに利用されて、政府関係者にゴーストハックを仕掛けてたんですよ。

清掃局員B
そんな・・・まさか?


C-273
背景-1




C-273
背景-2

 



C-273
セル



早い▲F.I
ゆっくりとT.U−
暗いアパートの一室
荒れ果てた
独身者の部屋

 

 

 


イシカワ(OFF)
あんたのアパートにいってきたんだ。誰もいやしない。独り者の部屋だ。

清掃局員B(OFF)
だから、あの部屋は別居の為に借りたアパートで・・・。

イシカワ(OFF)
あんたはあの部屋でもう10年も暮らしてるんだよ!



C-285

鏡のような海面に映る
自分の鏡像へ接近

 

*トニ・フリッセル「湖中の女」

 
ゆっくりと水面に近づく草薙 − 鏡像と実像がゆっくりと一体化していく。まさにこの映画のテーマを象徴するようなシーンである。映り込みの部分はオプチカルやスーパーではなく、CGを使って合成されている。しかも単なる合成ではなく、部分的に画像を歪ませたりして、水面のいかにも非実在的な感じを表現しているとのこと。従来こうした画面処理に関しては、もっぱら波ガラスが用いられていたが、イメージどおりの歪みというのはなかなか作られないらしく、その点ではCGの方が自在な表現が可能だという。

C-287

黄金色に輝く海面に浮上
 − ゆっくりと
現実音が聞こえてくる
遠い港の音
潮の響き
海鳥の声
微かな船の航行音
 

C-290

境界も定かでない
海と空のあわいに浮かぶ
 

C-299

バトーの正面に
ライトアップされた新市街が
重く揺れている
 
遠く浮かぶ新市街。地上300階にも及ぶ巨大ビル群がバトーに覆い被さってくるようにそびえ立っている。さらに、おそらく望遠レンズを使った画角を意識しているのだろう、遠近感のない圧縮された画面が、新市街とバトーとの距離をいっそう縮めているようにも感じられる。この距離感の希薄さは、本質的に距離という感覚の存在しない情報空間を象徴しているのだろうか。

C-302

顔を戻して
草薙
・・・恐れ、不安、孤独、闇。
それから、もしかしたら希望。
草薙とその背後の新市街をほぼ真横から捉えたカット。これもおそらく上のカットと同様に中望遠レンズの軽く遠近感が圧縮された画角を意識して描かれたものだろう。ちなみに、これら一連のカットを構成しているのが(草薙やバトーも含めて)全て近代技術によって作られたものばかりというのは何か意味があるのだろうか。


C-314
背景・BOOK


C-314セル


轟音とともに−
▲ホワイトF.J

旧市街
ビルの屋上スレスレに降下してくる旅客機の奇怪なシルエット
(SLOW)

 

C-316

看板がひしめく水路の街
ワイドレンズ
    *船足遅く、人の動き緩慢に
    (以下同一コマ落ちも検討)

 

          カット尻 別の船IN

 


C-317
背景・BOOK


C-317セル

 


水路と歩道と高架道路が共存する
複雑な街路
 
高架道路の下を流れる水路を行く水上バス。ひしめく看板と雑踏に埋没する街の中を、ゆっくりと船が流れていく。看板や電線など、ブックで重ねられる部分が異常に多いカット。まず、このレイアウトを見ただけでは、それぞれがどのように組み合わされるか想像もつかないかもしれないが、この映画には、こうした単に背景が緻密であるというだけではなく、構成そのものが複雑なカットが多い。空間、距離の感覚を明確に表現することによって、その距離というものが持つ具体的ではない、より抽象的な意味を求めているのかもしれない。

C-324

水上バス俯瞰
見上げている草薙
 


行き過ぎながら目で追う
(淡々とした表情)

 
水上バスの上から、水路際のビルの窓に映り込んでいる女性の人影を見上げる草薙。その影はどことなく自分に似ている。本当に自分はこの世に一つしかない存在なのだろうか。コピーではない、自分がオリジナルであるとどうして信じることができるのだろうか。全く表情のないその顔に、彼女はどんな思いを隠しているのだろう。

C-325背景



C-325
セル


草薙正面FOLLOW
看板送り込み
[BGオプチカル合成]
 


正面へ向き直る
半ば放心したような表情

 
流れていく看板。振り向く草薙。半ば放心したような表情。船は時間の流れのように、草薙の想いを残したままゆっくりと流れ続ける。そしてそんな草薙達とは関係なく、街並みは、看板は、情報は存在し続ける――このカットはコンピューター合成を用いて作られている。ちょっと見ただけでは分からないかもしれないが、カメラの移動に伴って、看板のパースも変化していっている。

ディジタル合成が効果的に使われているシーンなのであらためて紹介することにした。このカットは草薙にカメラを固定しながらゆっくりトラック・バックしていく設定になっている。そのため、背景は少しずつパースを変えながら遠ざかっていく動きになる。この場合、従来は密度マルチとオプチカル合成で処理していたのだが、それだとどうしても背景ががたつくのであまりゆっくり引くことができない。またオプチカル特有の色調の変化もある。そこでディジタル合成を用いるわけだが、ここではただゆっくり引くだけではなく、奥へ行くにしたがって看板を立ち上がらせ、擬似的な3次元の効果も出しているのである。実はこの看板の動きは、最初から考えていたものではなく、制作過程で、CG制作の田中氏の提案により加えられることになったものである。

 

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

資料映像3 美術設定(抜粋/26点)
資料映像4 レイアウト(1)
(抜粋/全カット中113カット)

資料映像4 レイアウト(2)

資料映像4 レイアウト(3)
資料映像4 レイアウト(4)

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カット 設定画

絵コンテ内容

完成映像

状況設定 台詞

C-326背景

 


C-326BOOK


草薙主観
(密マルチ)

看板越しに建築中の高層ビル
竹で組まれた足場

 
看板越しに建造中の高層ビルを見る。上が背景で下がその上に重ねられるブック。注意書を見ていただいたら分かるように、ブックはこれが全体で1枚ではなく、さらに細かく分けられて、それぞれ別個に動きが加えられる。画面としては押井監督の大好きな密着マルチである。

C-334

街角にふる雨  
変形ビルから触手のように突き出した看板達。広角レンズで捉えているので看板が四方に突き出ている感じがより一層強調されている。

C-335

再び陸橋下の信号
(前出とは別のもの)
 

C-336

俯瞰
看板島に降る雨
 
絵コンテには“俯瞰、看板島に降る雨”と書かれている。近代的なビルの谷間に、時間に置き忘れられたような異質の存在が混在している、といった感じだ。これもまた2029年という時代を象徴する風景として押井監督の心の中にあるものなのだろうか。

C-337背景・BOOK

スラム越しに見える超高層
色とりどりの傘が咲く
 
この風景は、今回、映画の制作に先だって香港のロケハンに行った樋上氏の写真(扉ページを参照・・・原文のまま)ほとんどそのままである。まさに、現実の風景の中に見出された未来の鏡像、といったところか。ここでは風景に象徴されているが、こうした豊かさと貧しさの極端なギャップが平気で存在するところがアジアという地域の特色なのかもしれない。

C-338

坂道を流れ落ちる雨水  
雨水に洗われる坂道。押井監督は、低い位置にカメラを据えて街をゆっくりと流していくシーンを好んで映画の中に挿入するようだが、確かに低い位置から見た街の表情というのは、普段私たちが見ているのと全く違うものである。もしかしたら水路にこだわるのも、その低いカメラ・アングルを必然として映像の中に入れ込んでいきたいからなのだろうか。

C-339

ポスターの前で雨宿り  

C-353B

その視野が
彼方のデッキ上に切り替わる
荒巻、バトー、トグサ
INしてくる草薙
 

C-354-1

検死官の声が流れる
(スピーカー)

軽く手を振る荒巻


検死官
準備ができました。
継なぎますか?

C-399

義体を見る
 

改めてコンソールに向かい
手を差し出す

 
9課ラボ/メインテナンス・ベッドの横に置かれたダイビング用のコンソールに向かうウィリス。ごくオーソドックスなカメラ・アングルで捉えられたカットだが、まずここで一度ウィリスと義体によって作られるイマジナリー・ラインにカメラを乗せることで、観客にこれからのシーンの主体者を明確にし、そうした上で次のウィリスの手元のカットに移るという構成になっている。ここではまだ肘から下の部分を隠しておき、次のシーンで手を持ち上げ、そうして手元のクローズ・アップに移るあたりはまさに手慣れた業といった感じだ。

C-402-1

その手元
ジャジャジャとキーを打つ義手の28本の指の動き
(1コマ動画で中なし)
 
ダイビングを始めたドクター・ウィリスがキーボードを叩く。その手元のクローズアップ。それまでいかにも普通の人間のように見えたウィリスが、じつはサイボーグであったことがこのワンシーンで分かる。ちょっとドキリとさせられるとともに、この世界においてサイボーグがどのような存在であるか(つまりいかに普遍的であるか)が分かるシーンでもある。

C-408・412

 

C-408
見た目で − 
全く動かない義体
 

C-412
モニター画面
     強コントラスト
     モノクロ
[V処理]

強い光を浴びている
架刑台上の義体


中村(OFF)
こいつは電脳犯罪史上、もっともユニークと評された・・・“人形使い”だ。


中村(OFF)
我々6課はその出現当初から重大な関心をもって“人形使い”を追い続けていた。ドクターウィリスを中心にプロジェクトチームを作り、“人形使い”に関するデータを分析して、その犯罪の傾向や行動パターンを特定した。
そして対人形使い用の特殊攻性防壁を組み上げて、彼がどこかの機密ボディに入るように仕向けた。

ウィリスがダイビングを始めた横で、身動きもせずメインテナンス・ベッドの上に横たわる義体。この後、C412ではビデオ処理した画面にかわり、映像が劣化して見分けがつかなくなるまでズーム・アップしていく。

C-450

FOLLOW

 

 

 

グッと踏み込む

バトー(無線)
次からは二発撃ち込め。
始めるぞ、奴等が車を換える前に追いつけよ。

C-462

9課本部屋上へリポート
着陸するヘリ



(「絵コンテ」に記入有り)
C-463
の指示 


 


 

航空灯を煌めかせ
“POLICE”の文字が
遠ざかってゆく

C-473

キャビンの草薙
銃を構えて座っている
 
アーマードスーツに身を固め、ヘリコプターのキャビン内で待機する素子。銃撃シーンは、それ自身もさることながら、そこへ至るまでのシチュエーションもまた全体の緊張感を盛り上げる重要な要素となってくる。多くのアクション映画で、各種銃器の装備や点検シーンを丹念に追うのはそうした段取りの一つであり、これから始まる戦いの予感を抱かせ、どのような武器で戦うかを明示し、さらにはその扱い方の重さによって常ならざる登場人物の精神状態を想像させるためである。さらにそれに続く移動シーンの静的な画面によって、観客をも登場人物の緊張の中に引き込んでいく。「パトレイバー1、2」に限らず押井監督の作品には必ずと言っていいほど同じような描写が見られるが、こうしたところに、本質的にはアクション監督である押井守の個性が現れていると言うことが出来よう。

C-486

指示しながらコンソールに向かうオペレーターたち

みんな同じ顔

 

C-488

空のない新市街の夜景
航空灯を煌めかせて
その上を征くヘリ
(密マルチ)
 
新市街上空を行くヘリコプター。このカットもビル群は背景の上にブックを重ねて、密度マルチによる立体的な動きを見せる。ちなみに背景の引きの速さは、一番奥のBG(濃い網のかかっている部分)が1コマ0.125mm、その上のブック1(薄い網の部分)が1コマ0.25mm、手前のブック2が1コマ0.5mmである。

C-509A

狙撃手なめて
接近してくるヘッドライト
 

C-521A

水没地区俯瞰
ヘリの視点より空撮風に −

 

草薙(無線)
・・・ノクトビジョン。

C-527

屋上に着地
中央に巨大なドーム状の天窓
 
博物館の屋根に着地した素子。細かいことだが、新市街の方向からこの水没地域にやってきたのだから、ヘリの進行方向を向いてロープを降りると、このレイアウトのように背後に新市街の巨大ビル群が必ず入ってくることになる。もちろんこういったことは常に地理的な相対位置関係を常に頭の中に入れておかなければまず気がつかないところである。

C-528

把手を掴んで力を込める  
一転して上のカットと逆アングルになり、天窓に取り付く素子を捉える。この一連のカットは(次のカットも含む)、良く見ると分かるが、全て素子がフレームの中に入ってくる、あるいは寄ってくるという構図になっている。おそらくこのあたりは、状況を“迫りくるもの”として見せるための演出なのだろう。

C-542

迷彩が破れて姿を現す戦車
(マスクランダム処理)
 
ヘリの機銃で落とされた天井のガラスにより正体を現した戦車。押井監督はこうした孤立した状況をうまく利用して存在感を出すのが実にうまい。特にこういったシーンでは、広角レンズが生きるという良い例になるカット。言うまでもないが柱が倒れ込んでいるのはレンズの歪みによるもの。

C-545

柱の陰で
バトー(無線)
・・・装備は?

草薙
ステアのカスタムとユニットB

バトー(無線)
そんなんでやれる相手かッ!

博物館の中で戦車に狙われ柱の陰に身を隠す素子。前のカットでは、突然の戦車の出現に驚愕を隠し切れなかった素子だが、ここではすでに落ち着きを取り戻している。広角レンズで下方から捉えることにより、素子の存在とその状況を強調し、彼女の心理的な動きを中心にして見せる。アクション・シーンの緩急の中では重要な緩のカット。

C-569

俯瞰
静かに降り続ける雨
 

C-582背景・BOOK

床に伏せていた草薙
転がるようにして

 

スーツの前を開く

草薙
やっとで弾切れか!


 
戦車の銃弾を避け、床を転がるようにしながらスーツの前を開く草薙素子。カメラはその素子の動きをパンで追う。上のレイアウトでも、セルの網ふせの部分から素子を追う様子を指示している。
 

C-590-1

 

 

C-590-2


慌ててターレットを戻し
対人用機銃で掃射する戦車
 

 

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

資料映像3 美術設定(抜粋/26点)
資料映像4 レイアウト(1)
(抜粋/全カット中113カット)

資料映像4 レイアウト(2)

資料映像4 レイアウト(3)
資料映像4 レイアウト(4)

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カット 設定画

絵コンテ内容

完成映像

状況設定 台詞

C-604

さらに振り上げた右腕を掴んで
そのまま引き摺り上げる
頭部を掴んだままマニピュレーターに力が篭る
 
戦車のマニピュレーターにつかまれたチタン製の頭蓋骨がミシミシと音を立ててつぶされようとする。草薙は糸の切れた操り人形のようにぶら下げられるばかりで、全く為す術もない。徹底的に容赦の無いカット。まさにこの作品のリアリズムがここに集約されているといってもいいのではないだろうか。いくらサイボーグ化されているとはいえ、戦車に人間が勝てるはずがないという当たり前の現実をここで突きつけることにより、この作品はアニメーション的快感を自ら否定するとともに、その呪縛からも逃れているのである。

C-607背景・BOOK

二階の回廊から発砲するバトー
対戦車ライフルのバケモノ
戦車の装甲を貫通
 

C-610

入れ込みで − 
常識外れのマズルフラッシュ
ロケットのように飛び出すケース
 

C-617

海上を征く6課のヘリの編隊
(密マルチ)
航空灯は点けていない


エスコートからの通信が途絶えた。作戦を第二段階に変更して目標を全力で破壊する。
(参考本では「C581」となっている)

水没博物館に向かって海上を行く6課のヘリコプター。これもまた絵コンテとは大きく画面構成の異なるカットだ。絵コンテでは新市街も巨大ビル群を背景に横方向(斜め下?)から編隊を捉えていたのだが、レイアウトでは正面斜め上から広角レンズいっぱいに捉える移動感溢れるカットに変わっている。確かにこの方が現場に急行する緊迫感のようなものは出てくる。これもまた軍用機の映像などで(一部のマニアには)おなじみのショット。特に対象物となる地表が近いほど、スピード感の出てくるアングルだ。

C-618651

キャビンの
狙撃管制所

 

 


狙撃管制システムの
ディスプレイに
ザザ!と一斉にノイズ

 

指揮官(無線)
狙撃犯、目標の優先順位を確認。第一目標コード2501。
(「犯」はほんとは「班」だと思う)



暗闇の中に浮き出る。光の拡散している感じにフィルターの効果がはっきりと現れている。

C-621

狙撃ユニットのヘリ
キャビン内シルエット
(密マルチFOLLOW)

ユニット01接続完了。


ユニット02、接続よし。

C-623-1

ハッチから顔を上げて
バトーと有線した
戦車の操縦者の頭が見える

草薙の方を見て

 


バトー
よォし・・・と。

(ここから無線)
聞こえるか?
気休めかも知れねぇが、こいつの電脳を経由してモニターしてやる。こんな場所じゃバックアップもできねぇしな。

素子が人形使いのゴーストにダイブするのをモニターするため、戦車兵の電脳を介して素子と自分を有線でつなぐバトー。一見当たり前のカットに見えるが、戦車の上には、ハッチや対人機関銃など細かい付属品がたくさんあるので、全体のパースをきちんと合わせるのは大変だったのではないだろうかと考えずにはいられない。もっともこの作品は全カットそうだが。

C-624

並べられている
草薙と義体
目でバトーを見ている
表情は無し

草薙(無線)
バトー。

バトー(無線)
何だ?

草薙(無線)
・・・ありがとう。

C-626

草薙

 


目線を天井へ上げる
目パチなし

 


草薙(無線)
始めるわ。


 

C-628634

人形のようになっている草薙
その義体の頭が
「聞こえる・・・」で動く


 

 

 

人形使い(草薙)
首を回して草薙(人形使い)
を見る

草薙(無線)
視界に侵入。
サケード正常。
・・・聞こえるバトー。

草薙
何のために?

人形使い
あることを理解して貰った上で君に頼みたいことがある。

 



C-631

草薙(人形使い)UP
いつもの草薙とは違う
柔和な表情

人形使い
私はあらゆるネットを巡り、「自分の存在」を知った。
入力者はそれをバグとみなし、分離させるため私をネットからボディに移した・・・。

C-633638

バトーの前で
二つの義体の会話
草薙の義体(人形使い)
のみ口パク

以前と同じセリフを
繰り返す

 


ギョっ!とするバトー

 


人形使い
このボディに入ったのは6課の攻性防壁に逆らえなかったからだが、9課に留まろうとしたのは自分の意思だ。

バトー
オイ!一体何を話してるんだ。モニターできねぇぞ!



草薙
融合?

人形使い
完璧な統一だ。君も私も総体は多少変化するだろうが失うものは何もない。
融合後に互いを認識することは不可能な筈だ。



C-637

草薙(人形使い)UP 人形使い
君と融合したい。

C-644

博物館上空のヘリ
ホバリング
(密マルチ)
 
上空でホバリングしているヘリコプターから見た博物館。カメラは左斜め上方にふられ、それに伴ってヘリコプターが相対的に逆の方向に移動して見える。このあたりは密着マルチの効果が生きてくるところ。浮遊感、距離感などをゴンドラ・マルチを使わずに表現するには、移動度の差がそのまま距離の差として認識される密度マルチが有効である。ただし対象物のパースは変化しないので、あまり長い時間引くことはできない。

C-646

狙撃ヘリのキャビン 射手A(無線)
ユニット01。
目標をポイントした。
ヘリコプターの上から素子と人形使いに狙いを定める狙撃手。狭い機内にいる狙撃手は広角レンズで捉えられているようだが、博物館の方は随分と迫って見える。先のカットと併せて、このヘリコプターがかなりの低高度で飛行しているためであろうか。またたとえそうでなくても、狙撃手の心理の反映として、博物館の存在感を強調しているのかもしれない。あくまで正確なレイアウトも手段であり、それに縛られる必要はないのだから。

C-655

長焦点レンズ風に
(マルチフォーカス下段)
BGボケ

草薙
最後にひとつだけ。
私を選んだ理由は?

C-656

同上

 


   (間)


   人形使い
私たちは似たもの同士だ。まるで鏡を挟んで向かい合う実体と虚像のように・・・。
C-655/C-656については、説明するまでもなくこの二つのカットは対になっている。絵コンテにもこのカットは“長焦点風”にとあるが、ズーム・アップ特有の圧縮された遠近感の効果を狙ってのことだろう。遠近感が圧縮されると、このカットのように、画面の中の対象物のどちらかが強調されるということがなくなり、両者が対等な関係に置かれる。また被写界深度が浅くなるので、背景がボケ、手前の人物が浮き出る感じになる。まさに今はこの二人の関係に全てが集中しているといったところだ。

C-657

天窓を見上げる
草薙の義体

人形使い
見たまえ。
私には私を含む膨大なネットが接合されている。アクセスしていない君にはただ光として知覚されているだけかもしれないが。
一瞬、天窓を見上げる素子の“義体”。ここで押井監督はあえて絵コンテに“義体”という言葉を入れている。これはすでに素子の精神、あるいはゴーストが本質的にはその体から遊離して、独自の道を歩み出したからなのかもしれない。人形のようだった表情が、この次のカットからは生き生きとした生気を宿し、目は輝きを見せるようになるのである。では、なぜそれまでは表情を表さなかったのか。やはり人が感情を持つには、恐れが必要なのだろうか。もしそうなら、素子の顔に浮かんだ表情は、死を得た人形使いのものなのかもしれない。

C-658663背景


C-663セル


天窓から降る光(電子)
水面のように揺れる天窓
[CG + V処理]

草薙の主観
天使の足が一瞬見える

[CG + V処理]

 

人形使い
我々をその一部に含む我々全ての集合−

 



C-664背景・セル-1


C-664セル-2


二方向からの
目に見えない矢に貫かれて
砕け散る人形使いの義体頭部

 

中ナシで詰め動画
血液なし

 

 

C-665

バキー!と砕かれるバトーの腕と共に
草薙の頭部が消し飛ぶ
(中ナシ)
ジャンパーの下で義体が撥ね上がる
 

(C-664/665/666とあるが「666」はLDにはなかった)
狙撃手の銃弾に義体の頭部を吹き飛ばされる人形使いと、素子をかばって左腕を破壊されるバトー。事件の終幕を告げるアクションでありながら、やはり割り切れないものを残すのは、これが決して解決ではないからなのかもしれない。とりあえず証拠の隠滅には成功した6課のヘリコプター。事件は結局、“高度政治的取り引き”によって闇から闇に葬られることになるのだろう。しかしそれはネットの中には生き続ける。情報という形で。

C-668-1

緊張を解く狙撃手たち 指揮官(無線)
所期の目的は果たした。
全機離脱する!

C-670

水に落ちている
草薙の頭部
目が見開かれ
微笑んでいる

バトーの走りよる気配
その叫び声が反響する
ワイドレンズ

 


バトー(OFF)
素子ォー!

C-672スタート

 

 

C-672エンド


無人の室内
 − 静寂
(ややワイド)

傍らのテーブル上の小物が動いている


向かい側の寝室らしき部屋の奥へ
4−5段階でズーム


鏡に映っている
見知らぬ顔の少女
(カメラ目線)

 


C-673

ソファに深く腰掛けている
人形のような少女(草薙)

体を起こし
ゆっくりと自分の手を見る

カチリとドアの音

 

声の方を見る
 




 

 

バトー(OFF)
起きたか。

この「設定画」は、絵コンテの時の図柄と若干違う部分があります。
そのため、設定指示の説明文と「図」に食い違いがあるものもあります。その点は、ご了承ください。

資料映像1 メカ設定(抜粋/33点)

資料映像2 銃器設定(抜粋/39点)

資料映像3 美術設定(抜粋/26点)
資料映像4 レイアウト(1)
(抜粋/全カット中113カット)

資料映像4 レイアウト(2)

資料映像4 レイアウト(3)
資料映像4 レイアウト(4)

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