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映画「イノセンス」について

映画「イノセンス」が描くのは、人間の生きる意味である。命の有様といってもいい。
そして、クライマックスでのバトーと素子の再会。
その瞬間、観る者はある選択を求められる。「あなたは、何を抱いて生きていこうとするのか?」

 

 「イノセンス」 (INNOCENCE) は、2004年3月6日(土)に全国東宝洋画系でロードショーされたアニメ映画。
押井守がアニメーションとしては約9年ぶり、準備期間2年、実製作期間3年を費やして完成、301スクリーンで公開された大作である。
 Production I.G、徳間書店、日本テレビ、電通、ディズニー、東宝、三菱商事の提携作品。
 特別協賛 エプソン、特別協力 ローソン、読売新聞社。
 1995年に公開された「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の続編であって、続編ではなく、押井監督が描く新たな映像世界が「イノセンス」である。
 もともと作品名は「攻殻機動隊2」だったが、スタジオ・ジブリの鈴木敏夫プロデューサーの提案により現在の「イノセンス」となった。押井監督と鈴木プロデューサーは20年来の友人で、2人は朝日が昇るまで語り明かした仲間である。しかし、2人が組んで映画を制作するのは実に18年ぶり(「天使のたまご」以来)だった。この映画に関わることになり、鈴木プロデューサーがまず始めたことは、作品の内容理解であった。映画のシナリオと絵コンテを読み込み、監督が何を描こうとしているのかを読み解き、そこで浮かんできたのが「イノセンス」(純粋、無垢)というタイトルと主題歌「Follow Me」の使用だったそうだ。
 この曲は鈴木プロデューサーが大好きな曲で、かねてから映画に使いたいと切望していた。主人公バトーは、ラストで、わずかに残された記憶の中に残る女性・素子に再会するが、そこに「Follow Me」が流れたら、押井監督が描こうとしていることを、より明確に感じることが出来るのではないか、と考えたのである。
 従来、押井監督は自分の映画に主題歌を使わない主義だったが、「珍しく説得された」ということで鈴木プロデューサーの提案を受け入れ、さらに監督自らアレンジを施し、新しくなった「Follow Me」を初めて主題歌として映画に取り入れた。
 このイノセンスを宣伝するに当たり、宣伝担当プロデューサーの鈴木は、方針が決まらず悩みに悩んでいた。そして最後の手段として知り合いの女性に、まだ未完成の映像を見せた所、「せつない映画」といわれたその一言により、恋愛ものでも、刑事ものでもない、切なさを前面に出した映画「イノセンス」の宣伝方針が決まった。

 

 

 

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世界での評価

2004年、第25回日本SF大賞を受賞。
第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。これは日本のアニメ映画として史上初である。

作品世界

 本作品は士郎正宗の原作(「攻殻機動隊」講談社刊)になるが、映画パンフレットや映画の冒頭で引用されているとおり、ヴィリエ・ド・リラダン「未来のイヴ」(邦訳は創元社・刊)に強い影響をうけている。
  われわれの神々もわれわれの希望も、
  もはやただ科学的なものでしかないとすれば、
  われわれの愛もまた
  科学的であっていけないいわれがありましょうか
                   ――リラダン 「未来のイヴ」
 そもそも、台詞全体がなぜ膨大な引用から成り立っているかの理由そのものも、「未来のイヴ」において説明されているが、これに関し押井監督は、「台詞はすでに使い尽くされている。故に、過去の言葉の引用が説得力がある」とコメントしている。
 前掲書では機械人形を作る理由は所与の問題であったのに対して、「イノセンス」では「人間は、なぜ自分の似姿を、それもその理想型において創造しようとするのか」と、さらに根源的に問いかけている。
 「人間は、なぜ自分の似姿(=人形)を、造ろうとするのか」。
 古来より人は、人の形を模した<人形>を造り続けてきた。ホンダのアシモに象徴される人型ロボットへの夢もそのひとつである。
 「人はなぜ、人形を必要としているのか」。身体のほとんどが機械と化したバトーは、いわば、人間と人形の狭間を生きる存在である。そんな彼にとってその謎を解く手がかりは、自らが飼っているバセットハウンドのガブリエルと、素子への一途な想いだけであって、それはバトーが人間として生きる証でもある。
 そして、前述した  「映画「イノセンス」が描くのは、・・・」へと続くのである。

隠し設定の解説

1.ガイノイド・ハダリ起動の正体

 

 

  バトーがガイノイド・ハダリ(タイプ2052)が暴走した事件の証拠をつかむべく、プラン
  ト  船に忍び込んだ時、ハダリの攻撃に遭いました。
  これは単に、「不正規侵入者の排除のため」と思っていましたが、違う理由からでした。
  よく見ていれば分かった?のかもしれません。
        その詳しい解説は → ガイノイド・ハダリ起動の正体
  情報量が多いので、別ページにしました。

 

 

この映画「イノセンス」の解説本である 「ロマンアルバム 2501〜イノセンス絵コンテ集」 より

 

 

 

 

2.バトーのコンビニ内での銃撃戦

 

 

  バトーがコンビニ内で銃を撃った場面は、他から攻撃されその応戦で撃ったと思っていまし
  た。
  また、「キルゾーンに踏み込んでるわよ」という、守護天使(素子)の警告もハッキングし
  た人を通して、その人の口から言わせていると思っていました。
  ところが違っていました。
        その詳しい解説は → バトーのコンビニ内での銃撃戦
  にあります。

 

 

 この映画「イノセンス」の予習・復習のDVD 「From【GHOST IN THE SHELL】
 to 【INNOCENCE】」 と、
 解説本である 「ロマンアルバム 2501〜イノセンス絵コンテ集」 P94〜109より

ストーリー

 人間が電脳化、義体化によりアンドロイドやロボットとの境界が、曖昧になって久しい西暦2032年。素子(少佐)がいなくなってから3年。愛玩用ガイノイド タイプ2052「ハダリ(HADARY)」(ロクス・ソルス社製)が原因不明の暴走をおこし、所有者を惨殺その後自壊して記憶は初期化されるという事件が発生した。逃走した個体は、未登録の通路内で警官2名を殺害、所轄が踏み込む前に到着したバトーが、一人その通路に踏み込んだ。その通路奥でガイノイドを発見、バトーはその個体を射殺する。
 殺された8名の中に政治家、公安関係の退職者各1名が含まれており、テロの可能性も考慮されたため公安9課が捜査に乗り出した。公安9課のメンバーであるバトーは、新しい相棒のトグサとともに捜査に向かう。まず向かった先は、バトーが射殺したガイノイドが分析のため運び込まれた所轄である。
 そこの鑑識課 検死官のハラウエイに、破壊されたガイノイドから復元したメッセージを聞かされた。

 

 そんなおりに次の殺人が起こり、2人は現場へと向かった。ロクス・ソルス社の出荷検査部長が、所有するボートハウスで惨殺されたのだ。そこではすでに、9課のベテラン イシカワが現場検証を行っていた。バトーとトグサも合流し捜査をしていると、バトーが本棚に不自然な本を発見、開くと少女のホログラフが出てきた。このホログラフが、事件の鍵を握っていると考えたバトーは、現場から持ち去った。
 そして今回の殺人は、一連のガイノイド暴走によるものではなく、暴力団「紅塵会」の違法に改造された高出力サイボーグによるものであると判明。バトーとトグサは組事務所へ乗り込む。銃撃戦の末、新たに組を継いだワカバヤシと出荷検査部長を殺したサイボーグを確保。ガイノイドに殺された者の中に、組長がいることも考え、ロクス・ソルス社と紅塵会の繋がりが浮かび上がる。この殺人事件がきっかけで、ガイノイド暴走事件は、バトーとトグサの専従捜査に切り替えられた。
 その直後、バトーはいつも立ち寄る店で電脳をハックされ、銃を乱射してしまう。
 荒巻部長から監視を命ぜられていたイシカワのおかげで事なきを得た。
 バトーも義体のメンテナンスが終わり、事件解決にはロクス・ソルス社に直接当たるしかないと判断したバトーとトグサは、会社のある北端の択捉経済特区へと向かう。
 北端に着いた2人は、まずバトーにハッキングした凄腕のハッカーであるキムの屋敷におもむいた。
 罠を仕掛けていたキムにより、疑似迷路に入り込んでしまうが、守護天使のサインによりバトーが気が付き、迷路を抜け出してキムを確保した。
 バトーはガイノイド暴走・所有者殺害事件の物的証拠を握るために、沖に停泊しているロクス・ソルス社の、ガイノイド製造プラント船へ乗り込むことを決意するのである。
 船に乗り込んだバトーは、トグサのバックアップを受けて船内の捜査を開始する。しかし捜査を開始するや、船内の強力な監視システムにより発見され、戦闘用ハダリによる攻撃を受ける。
 追いつめられ囲まれたバトーに、守護天使(精霊とバトーは言っている)が舞い降りてきた。ガイノイド「ハダリ」に戦闘プログラムがダウンロードされた少佐が、バトーの危機を救うため現れた。以前、組んでいた時のフォーメーションで緊急端末へ向かう2人。到達した少佐は船の制圧のため、ガイノイドの物理的動作を止め、ネットの海へダイブしていく。ガイノイドの攻撃を止められるのは、バトーの30口径のみ。
 激しさを増すガイノイドの攻撃。事件の真相を暴くことが出来るのか、そして2人の運命は・・・。

イノセンス主題歌

Follow Me ( 恋のアランフェス )

 

 Follow me to a land across the shining sea
 Waiting beyond the world we have known
 Beyond the world the dream could be
 And the joy we have tasted.

 

 Follow me along the road that only love con see
 Rising above the fun years of the night
 Into the light beyond the tears
 And all the years we have wasted.

 

 Follow me to a distant land this mountain high
 Where all the music that we always kept inside will fill the sky
 Singing in the silent swerve a heart is free
 While the world gone on turning and turning
 Turning and falling.

 

 

 

 私についてきて、輝く海のむこうの国へ。
 私たちの知っている世界の彼方。
 ありうるどんな夢の世界、
 これまで味わったどんな喜びをも遙かに超えたその場所へ。
 私についてきて、愛する者にしか見えないこの道を。
 楽しい夜の年月を越えて浮かび上がる、
 涙と空費した過去のかなたの
 光の中へと続くこの道を。
 私についてきて、この山の奥の遙か遠い国へ。
 そこではいつも心に抱いてきたあらゆる音楽が空を埋めつくす。
 沈黙の歪みの中で歌えば、解き放たれる魂。
 その間に世界は回り、回り
 回り、そして落ちていく。

 


 

   Music by J.Rodrigo  Lyrics by H.Kretzmer/H.Shaper
   Ediciones Joaquin Rodrigo,Madrid
   編曲:川井憲次  歌:伊藤君子(VideoArts Music)

イノセンス挿入歌1

   悲傷(かな)しみに

 

   鵺鳥(ぬえどり)鳴く

 

   吾(わ)がかへり

 

   見すれど

 

   花は散りぬべし

 

   慰(なぐさ)むる心は

 

   消(け)ぬるがごとく

 

   新世(あらたよ)に

 

   神集(かみつど)ひて

 

   夜は明け

 

   鵺鳥(ぬえどり)鳴く

 

   咲く花は

 

   神に祈(こ)ひ祷(の)む

 

   生ける世に

 

   我(あ)が身悲しも

 

   夢(いめ)は消(け)ぬ

イノセンス挿入歌2

   生ける世に

 

   我(あ)が身悲しも

 

   夢(いめ)は消(け)ぬ

 

   怨恨(うら)みて散る

音楽

音楽 川井憲次氏
 メインテーマでは、「Ghost in the Shell/攻殻機動隊」では3人だった民謡歌手が、75人に増やされている。そして、そのコーラスを4回録って重ね、重厚感を生み出している。ちなみにTOPページにある映画パンフレット紹介部分(「PRESS SHEET・PAMPHLET・etc」)の最後の方で紹介しているTV番組「GHIBLI 熱風が舞う時 20年の宿題」の中で、押井監督は「前に使った“おばさんコーラス隊”を使おう」と言っていた。
 オルゴールに関しては、巨大なオルゴールがないことと、回っているモーター音などノイズも含めて“オルゴールの音”であるため、わざわざディスクを作り、録音場所も残響音のある栃木県の大谷石採石場とし、8本ほどマイクを立て位置を変えながら録音したそうである。
 この「イノセンス」では、これらの録音ばかりではなく、特に最後の戦闘シーンなどは130チャンネルも使っていると言うから驚きである。コンシュマー向け(民生用)では、ステレオというと2チャンネル、昔「8トラック」といわれたテープもあった。さらにDolbyでも5.1チャンネルとかいっている。よく130チャンネルも使用して、バランスを取りながら1つの曲に仕上げるものである。この130チャンネルは、川井氏も初めてだそうである。
 もっともプロの録音現場の写真を見ると、録音コンソール(幅は?)には、その幅一面にレベル調整用のスライダーがあるが、あれはチャンネル数なのかな?、もしくは周波数をあれだけ細かく分けて調整できるのかな?。
録音監督 若林和弘氏
 音作りには、最初押井監督から懐かしい音、未来と古さが融合したような音でというオーダーがあったそうである。「アンティーク」な感じ、音に関しては今回きっちりと仕上がったそうである。
 映画を作るスタンスは、7割はその映画を観るターゲットが先に決まっていて、そちらを見据えて作っていくが、「イノセンス」は残りの3割に属し、逆のアプローチ、つまり「制作者側から観客に提示する」形の映画のため、「みんなに観てもらい評価されると嬉しい」とコメントしている。

 


 

 「音楽は伴奏ではない。映画の一部だ」という押井監督。
 今回の「イノセンス」では、映像処理、映像表現と同様に、音楽・音響にも最高の状態でやりたいという強いこだわりを持って、制作に挑んだ。そして、前述の“おばさんコーラス隊”では、その迫力の歌声に圧倒されたそうである。
 「これまで20年くらい映画を作ってきたけれども、ここまでちゃんと音を仕込めたっていうのは、初めて」と、押井監督はその仕上がりに大満足だったということである。

スタッフ

原作 :             士郎正宗(『攻殻機動隊』講談社刊)
監督、脚本 :          押井守
演出 :             西久保利彦、楠美直子
キャラクターデザイン :     沖浦啓之
メカニックデザイ ン:      竹内敦志
プロダクションデザイナー :   種田陽平
レイアウト :          渡部隆
作画監督 :           黄瀬和哉、西尾鉄也
美術監督 :           平田秀一
デジタルエフェクトスーパー
バイザー :           林弘幸
ビジュアルエフェクト :     江面久
ラインプロデューサー :     三本隆二、西沢正智
主題歌 :            伊藤君子 (VideoArts Music)
音楽 :             川井憲次
音響監督 :           若林和弘

プロデューサー :        石川光久、鈴木敏夫
制作 :             Production I.G
製作協力 :           スタジオジブリ
製作協力 :           ポリゴン・ピクチュアズ
配給 :             東宝
原画 :              山下将仁、井上鋭、水村良男、井上俊之、安藤雅司、
                 本田雄、堀内博之、藤田しげる、亀井幹太、河口俊夫、
                 大平晋也、うつのみや理、森田宏幸、伊藤秀次、
                 新井浩一、橋本晋治、清水恵子、平松禎史、竹内志保、
                 伊東伸高、名倉靖博、浅野恭司、多田雅治、伊藤嘉之、
                 小西賢一、竹内敦志、中村章子、Theresia Whinkler、
                 小松田大全、中村光宣、大久保徹、永島明子、
                 窪田康高、中島由喜、矢萩利幸、西尾鉄也、黄瀬和哉、
                 沖浦啓之