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概略

「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は1995年11月に公開されたアニメ映画である。
制作はProduction I.G、製作は講談社、バンダイビジュアル、MANGA ENTERTAINMENT、配給は松竹。
2004年にはGHOST IN THE SHELL2として、続編「イノセンス」が公開された。

 

 

 

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世界での評価

 本作は世界各国で上映された。
イギリス/1995年12月8日より(約30館)
アメリカ/1996年1月21日より(約80館)
フランス/1997年1月29日より(約40館)
オーストラリア/1996年2月20日より
ニュージーランド/テレビ1996年4月(TBC)で公開・放映された。

 

 アメリカでは1996年に日本の映像作品としては初めて、ビデオセールスがビルボード紙上で発売週に全米No.1を記録した。本作のビデオグラム(映画フィルム以外のビデオテープ、ビデオディスク、LD、DVDといった映像ソフト)は100万本以上売れた。
 他の映画への影響は、リュック・ベッソン監督の「フィフス・エレメント」(私も好きです)でヒロインが未来都市のビルからダイブするのは「攻殻」の影響と報道された。
 また「マトリックス」に影響したことも有名である。監督・ウォシャウスキー兄弟は「攻殻」のビデオを入念に研究したと言われている。特に2作目でヒロインのトリニティーが、バイクでジャンプし着地したところなど、まさしく草薙素子のポーズを連想させる。

出品された国際映画祭

ロッテルダム国際映画祭
         ・・・1996年1月24日〜2月4日/Exploding Cinema部門
ベルリン映画祭
         ・・・1996年2月16日〜26日/フォーラム部門
ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭
         ・・・1996年3月8日〜23日/Japan Com部門
香港国際映画祭
         ・・・1996年3月25日〜4月9日
シンガポール国際映画祭
         ・・・1996年4月4日〜20日
韓国・釜山映画祭
         ・・・1996年9月13日〜24日
フィンランド・ヘルシンキ映画祭
         ・・・1996年9月20日〜26日
ブラジル・サンパウロ映画祭
         ・・・1996年10月18日〜11月1日

時代背景

 舞台はA.D.2029年。
 通信のネットワーク化は、技術革新にともない全世界的なものとなり、国境を越えた巨大なネットワークは複雑に入り組んだ姿となり、国家の外交や政治、企業の経済活動になくてはならないものになっている。
 先進国では政府や企業だけでなく、一般の人々の生活にも巨大なネットは浸透している。
 その巨大に成長したネットに脳から直接アクセスする技術も進歩し、一般の人々でも(不法入国した難民や、資格を剥奪された人間たちは除く)お金を出せば自分の脳を「電脳化」することができ、生活に必要なサービスを電脳ネットから得ることが出来るようになった。
 また脳以外については、機械化(本作では「義体化」)することにより身体機能の強化も、一般的に行われるようになっている。
 このような環境の中で犯罪も特殊化・凶悪化し、犯罪が発生してからはもとより、前であっても犯罪の芽を捜し出し、これを除去する首相直属の非公然な攻勢の組織。それが公安9課、通称「攻殻機動隊」である。

ストーリー

 高さ1000メートルにも達する超高層ビルの屋上から突き出た縁の上に、草薙素子(少佐)は座っている。そして彼女のうなじから伸びるケーブルは、ビルの通信回路につなげられ、会話を盗聴=ハッキングしている。外交官とプログラマーの会話が聞こえてくる。「プロジェクト2501」のメインプログラマー台田は重い責任から逃げたくて、ガベル共和国に亡命を希望していた。
 そんなとき、亡命を阻止したい外務省公安6課の部隊が完全武装で現場に突入した。外交官たちの制圧に成功したが、外交官特権とプログラマーの亡命を主張したため、6課は撤収せざるを得ない状況になった。
 その瞬間、部屋のガラスがはじけ、多数の銃声とともに外交官の頭が破裂した。外交官は暗殺された。あわてて窓の外を撃つ公安6課の部隊。しかし窓の下を見ると、任務を達成した少佐が、光学迷彩を身にまとい怪しく微笑みながら顔を手で被い隠すようにして、夜景の中に消えていった。
 それまでEC圏を中心に、株価操作・情報収集・政治工作・テロ・電脳倫理侵害などを行い、多数の容疑で国際指名手配されている「電脳犯罪史上もっともユニークな」謎のハッカーがこの国に現れた。推定国籍はアメリカ。しかし年齢・性別・経歴など未確認で正体不明。ただ不特定多数の人間をゴーストハックして自在に操る手口から、付けられた名前が「人形使い」(コードネーム)である。
 その人形使いは、最初外務大臣・通訳への電話回線を利用しての侵入で現れてきた。外務省はガベル共和国代表との秘密会談を翌日に控え、外務大臣は当国に亡命を希望しているガベル共和国・旧軍事政権の指導者マレス大佐を放出してガベル共和国への援助を行うか、亡命を認め援助を断るか選択に迷っていた。人形使いの目的は、その秘密会談の妨害が推測された。
 事態を重く見た公安9課の部長・荒巻は、あらかじめ通訳の電脳に網を張り、ウィルスの侵入を待っていた。アクセスして来たのを逆探知し、犯人逮捕に少佐はバトー、トグサ、イシカワらとともに出動。ゴーストハックを実行していたのが、清掃局員であることを突き止めた。しかしこのゴーストハックは、架空の妻が浮気をしており、その調査である、というように洗脳されていための行為であった。
 だがついに主犯の尻尾を突き止め、旧式の光学迷彩(17式)を使って逃げる犯人を、銃撃戦、格闘戦の末に逮捕するが、彼も「人形使い」に操られた人形に過ぎなかった。
 後に残されたのは、ニセモノの記憶を植え付けられたゴミ清掃員の哀れな姿だけであった。
 この時、素子は「自分は本当に自分なのか。もしかしたら、私の記憶も清掃員と同じように、他人に作り上げられたものではないのか?。それどころか、最初から自分は存在せず、義体の中に封じ込められた模擬人格ではないのか?。」という、全身を義体化したサイボーグにわきおこる疑問に苦悩していた。
 そんな中、事件は発生した。政府御用達の義体メーカー「メガテクボディー社」の生産ラインにハッキングし、義体を組み立てて盗むというものだ。政府最高機密のプロテクトをすり抜けたこと。9課メンバーの義体はメガテクボディー社製であることをかんがみ、バトー達は暗い気持ちとなった。
 しかしその義体はあっけなく確保されてしまった。雨の道路で裸の女をはねてしまったと、正直な運転手が連絡してきたためである。
 持ち込まれた義体を9課で調べてみると、補助電脳内に「ゴースト」らしきものが存在することが判明した。さらに調査を進めようとした矢先、公安6課から中村部長とウィリス博士が9課に来た。
 ウィリス博士が端末を操作し調べると、驚くべき事実が公表された。この義体にやどるゴーストらしき存在こそ、あの「人形使い」であると。中村部長は、人形使い事件は発生当初から6課が管轄しており、アメリカの協力で確保できたので、外務省公安6課に義体を引き渡して欲しいと要求してきた。
 その時突然、義体が言葉を発した。
 「私のコードネームは、プロジェクト2501、情報の海で発生した生命体だ、一生命体として、政治的亡命を希望する。」と。「ただのプログラムだ」と反論する中村部長を論破し、6課にとって不都合な状況になりそうになった時、突然銃撃と爆発が発生し、義体が消えた。
 警備の不備を抗議しながら中村部長達は去っていった。

 しかしトグサは、いくつかの疑惑から、この事件には裏があり公安6課が仕組んでいる可能性を指摘した。少佐は、トグサの勘を信じメンバーにすでに指示を与えていた。
 イシカワの調べで、プロジェクト2501の全貌が明らかになってきた。
 「人形使い」は、外務省が他国の政治経済を操作し、外交を有利に進めるために作った一種のウィルス・プログラムだったのだ。それが制御不能となり、機密が漏洩しそうになったため、回収におよんだのである。
 ダミーを使い二手に分かれた逃走車を、少佐はヘリで、バトーは車で追跡。先にバトーは仲間の協力で車を確保するが、こちらはダミーだった。
 ヘリで追跡した少佐の行き先は、水没しかかった博物館であった。潜入し、車を発見した少佐。
 しかしそこには、熱光学迷彩を施した大型戦車が潜んでいた。軽装備の少佐と、重戦車との死闘が開始された。だが重戦車の前では、最高性能の義体をフルに使った少佐でも歯が立たない。
 脳殻をつかまれ絶体絶命の時、バトーが対戦車ライフルで重戦車の活動を停止させた。
 「人形使い」へのダイブを決意した少佐。しかし6課は「人形使い」の回収が不可能とわかり、機密漏洩を恐れ狙撃ヘリに、「人形使い」の潜む義体と少佐の破壊を命じた。
 少佐の運命と、人形使いの真の目的は?・・・

プロジェクト2501の全貌

 人形使いが暴露したように、プロジェクト2501とは、企業探査、情報収集、政治工作などの非合法活動を目的としたハッキング・プログラムである。それも外務省が米国・ニュートロン社と組んで、外交工作用に内々に作り上げられたというシロモノ。この事実をふまえて考えると、あらゆる事柄に合点がいく。
 当然、外務省はプログラムの暴走による機密の漏洩を防ぐために、さまざまな証拠の隠滅に走る。ストーリー冒頭の外務省認定プログラマーの亡命阻止。公安9課はまんまと6課にハメられて、暗殺の手伝いをしたことになる。さらに、ガベル共和国の旧指導者・マレスへの犯罪疑惑のでっちあげ。ガベル共和国新政権に機密を知られ、ODAという名の口止め料を支払わなければならなくなった外務省は、マレスを亡命者として受け入れている手前、彼を犯罪者に仕立てて国外に追い出すことで体裁を繕おうとしたのだ。そして逃亡した人形使いのゴースト入り義体の強行回収劇。まさか義体が逃げ出すとは考えなかったのだろうが、これがきっかけとなってプロジェクトの一部始終が露見するわけである。このように一見バラバラな事件が1本の線でつながるのだ。
 政治機関の外交工作、意外な所からの機密の漏洩。そして、事実を闇に葬るための事件すり替えと責任者の辞任。いつの時代もよく聞く話である。

 

映画パンフレット 「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」より 「原文通り」

記憶と生命のつながり

 人間の脳の働きとコンピュータ・プログラムとの違いは何か?「自分」を認知できるかできないか・・・・・・。では超高度情報社会の下、コンピュータ・プログラムが膨大な情報を取り込み記憶していく中で、「自分」を認知してしまったらどうなるのか。脳ミソ以外を人工器官化している人間が溢れ、生命体という定義があやふやになっているこの時代、もはやその差異を見つけ出すことは難しい。
 人間は過去に得た情報を記憶したことによって、自分の存在を認知している。――例えば突然、記憶喪失になったとしたら、人間はその時点から自分を説明する術を失う。――同様に情報の海の中で「自分」を見つけた人形使いを、個性を持った生命体と考えるのも、ある意味で正しいと言えよう。さらに人形使いは、自らの種の保存や多様性を求めて、草薙との融合を計ろうとするが、これも一生命体として、子孫を残して死を得るという基本プロセスを欲っしているのだと考えれば不思議はない。
 問題はなぜ融合する相手に草薙を選んだか。「私たちは似たもの同士だ」の台詞どおり、人形使いが遙かなる情報の海からプログラムの中の自分を見つけたように、完全にサイボーグ化された草薙が情報の海から人間としての自分を見つけ出そうとする姿に、自分と同じ何かを感じたからではないだろうか?

 

映画パンフレット 「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」より 「原文通り」

オープニング&エンディング曲

   吾(あ)が舞(ま)えば 麗(くは)し女(め) 酔(よ)いにけり

 

   吾(あ)が舞(ま)えば 照(て)る月(つき) 響(とよ)むなり

 

   結婚(よばい)に神降(かみあまくだ)りて 夜(よ)は明(あ)け 
   鵺鳥(ぬえとり)鳴(な)く

 

   遠神恵賜(とほかみえみため)

 

                 大和言葉

 

 音楽を担当した、川井憲次さんは「攻殻」では「まず太鼓で行こう」ということが決まったと話しています。池袋で民族楽器の展覧会があり、インドの太鼓で”タブラ”と”ムリタング”と言うのがあったそうです。叩いたら良い音がしたので買って帰り、押井監督に聞いてもらいゴーサインが出ました。
 ただ気をつけたことは、日本人が持っている太鼓の感覚を大事にすること。
 そして大切なこととして、生音にこだわらず映像にもっともあった音を探すことだったそうです。

 


 

   麗し女 (くはしめ)      美女

 

   鵺鳥  (ぬえとり)      夜の鳥

 

   遠神恵賜(とほかみえみため)  遠くの神が恵みを垂れてくださる

スタッフ

原作 :         士郎正宗
製作 :         ANDY FRAIN、宮原照夫、渡辺繁
プロデューサー  :   石川光久、KEN IYADOMI、松本健、水尾芳正
監督、絵コンテ :    押井守
脚本 :         伊藤和典
演出 :         西久保利彦
作画 :         沖浦哲之、黄瀬和哉
キャラクターデザイン : 沖浦哲之
メカニックデザイン :  河森正治、竹内敦志
銃器デザイン :     磯光雄
美術設定 :       渡部隆
美術 :         小倉宏昌
色彩設定 :       遊佐久美子
撮影 :         白井久男
編集 :         掛須秀一
音楽 :         川井憲次

音響 :         若林和弘

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